フランス領ギアナ生まれ、現在は香港を拠点に活動している若手写真家である凌文滔(レン・マン・トウ)は、チェコスロバキアの代表的写真家であるヨゼフ・スデックやヨゼフ・コウデルカに強く惹かれてチェコへ渡り、プラハで写真術を磨いた。

本作は、彼がプラハで体験した繭から抜け出すような感覚を視覚化する試みの一冊である。ロマンチックな眼差しで捉えた中・東欧の自然風景と、自身の心象風景に魅了されながらも、凌は写真技術や美術教育の枠組み、自己表現というものに囚われていることに気づいた。ハイコントラストで質感豊かな、しばしば抽象的なイメージの連なりの中に、温もりを湛えたポートレートが立ち現れる。人と町との繋がりをたどりつつ、時間と記憶の層が交錯するなかで、凌文滔はひとりの写真作家として羽化していく。

「《とある羽化の事例》は物語りでもコンセプチュアルな作品でもない。それは、凌文滔の独自のヴィジョンによって結び合わされた写真群である。見るものに驚嘆し、見ることを通じて自身を知っていく。私たちもまた、それらの感覚や響き、空気、そして豊かな階調世界とともに、『見る』という行為そのものの只中に立ち会うことができる。」
― ヤン・ドウシャ(本書あとがき「『とある羽化の事例』--形成の痕跡」より)

- 判型
183 × 172 mm
- 頁数
120頁、掲載作品60点
- 製本
ソフトカバー
- 発行年
2026
- 言語
英語、日本語、中国語
- エディション
500
- ISBN
978-4-910244-52-5

Artist Profile

凌文滔

2000年、フランス領ギアナ生まれの写真家。プラハで写真を学び、現在は香港を拠点に活動をしている。
凌は写真の本質を通して、光と時間を馴らそうと試みながら、時間と精神が融合する瞬間を写真として切り出し、生命の本質を探究している。
彼の写真において慎重に切り取られた現実は、観る者に衝撃を与えると同時に、自らを導くための航海図のような役割を果たしている。それは人生の旅への憧れを呼び起こし、彼の写真実践の基盤となっている。