『瞽女(完全版)』は、1972年の春から1973年の夏まで写真家・橋本照嵩が盲目の遊芸人・瞽女に密着し、旅を共にしながら撮影した作品。

瞽女は近代では新潟県を中心に各地方を巡った盲目の女性旅芸人で、日中は農家を訪ね、門口で三味線を弾きながら短い唄を唄い、夜には長めの物語を弾き語り集まった村人に聴かせ、その対価として米や作物や金銭を得ていた。工業化と都市部の発展が進んだ1970年代前半当時、農業とそれに従じる地方人口は急激に減少し、その影響が瞽女の生活を直撃した結果、橋本照嵩が後を追ってカメラに収めたこの3人の老いた瞽女がその最後の存在となった。

自然豊かな土地の人々の暮らしと瞽女との関わりが非常に丁寧に描写されているこの作品は、今まで刊行物として『瞽女』(1974年のら社刊)、『瞽女』(1988年アロン書房刊)、『瞽女の四季』(1984年音楽の友社刊)があるが現在はすべて絶版となっている。2019年に禅フォトギャラリーから出版した『瞽女 アサヒグラフ復刻版』が国内外で好評を博したことがきっかけとなり、204ページに及ぶ『瞽女[完全版]』としてこの度新たに刊行するはこびとなった。1万3千点以上に及ぶカットから蒼穹舎代表・大田通貴氏が選出・編集し、そのネガを高精細スキャンすることでディテールとトーンを印刷で再現している。また、瞽女に密着した当時の2年間分の撮影日記とその英訳も付記している。

-判型
200 × 200 mm
-頁数
204頁、掲載作品:172点
-製本
ハードカバー
-発行年
2021
-言語
英語、日本語
-エディション
700

Artist Profile

橋本照嵩

1939年宮城県石巻市生まれ。1963年日本大学芸術学部写真学科卒業。1974年、写真集『瞽女』出版(のら社)にて日本写真協会新人賞受賞。同年、荒木経惟、中平卓馬、深瀬昌久、森山大道らとともに「15人の写真展」(東京国立近代美術館)へ参加し「瞽女」を出品。作品は国立近代美術館へ収蔵された。1979年から1981年には韓国を精力的に訪れ李朝民画を撮影した。2011年に被災した故郷の石巻へ定期的に帰郷し撮影を続けている。近年は「瞽女」シリーズを中心に国内外を問わず多数の個展を開催しており、主なものに禅フォトギャラリー(東京、2023年)、池田記念美術館(新潟、2022年)、AN-A Fundación(バルセロナ、2023年)などがある。主な出版物に、『北上川』(2005年、春風社)、『石巻-2011.3.27〜2014.5.29』(2014年、春風社)、『西山温泉』(2014年、禅フォトギャラリー)、『新版 北上川』(2015年、春風社)、『叢』(2016年、禅フォトギャラリー)、『山谷 1968.8.1-8.20』(2017年、禅フォトギャラリー)、『瞽女アサヒグラフ復刻版』(2019年、禅フォトギャラリー)、『瞽女』(完全版、2021年、禅フォトギャラリー)、『石巻 1955.6-1969.5』(2023年、禅フォトギャラリー)などがある。

Gallery Exhibitions