『To Nietzsche (ニーチェへ)』は、阿斗の撮影及び劉珂&晃晃の演出により出来上がった作品である。

現在中国の成都を拠点にしている三人。資本主義が進む息苦しい環境においてニーチェの詩を暗闇の中の光と感じた彼らは、自分自身を取り戻すためにイメージで表現し、ニーチェに呼びかけるようにこの作品を作り上げた。

 

「現時点でニーチェの考えを私の作品の冒頭に使うことは時代遅れなのだろうか。資本主義の下で、且つ厳格な教義における独占的思考の下で、我々は怖気付かずにいられるだろうか......
ニーチェが軽蔑したちっぽけな商売人たちのように、我々をかきたてることのない本心と逆の方向へ進む物事に対し、否を唱える勇気はもはやない。真実のため、そして我々が自身の神になるため。我々はこの事をあまりにも長い間避けていた。

おそらく現在の唯物論的世界では、詩と哲学が失われた我々の頭の中は、弁解、理屈、そして空虚な言葉でいっぱいだ!我々は天国には入りたくない、この俗界は我々のものであるべきだ!(中略)

海の上を漂流するボートが空に向かって次から次へさらなる高みへ押し上げられるように、私はイメージを使って哲学的な詩を描きたい。ニーチェから私の心の中に伝わった熱意がこの海全体を照らした!」
― 阿斗

「強風に立ち向かうと、むき出しの身体はすぐに熱を失った。これは普通では経験できないことだ。布に包まれると、まるで自分がその一部であるかのように感じる。それはあなたを包み込み、あなたの息を奪い、あなたの息を止めさせるのだ。あなたは徐々に身体の感覚を失い、別の状態に連れて行かれる。これは生まれる前の状態、根源の状態、または死後の状態だ。この状態では私は劉珂に近づくことができなかった。私は自分の不快感に気づき、恐怖を感じ、距離をとって観察するようにした。一方で撮影者の阿斗はほとんどトランス状態で、何かを口ずさみながら、撮影の距離を変えつつどんどん近づいてきた。その場面は非常に長く続いたように思えた。極度に強まった風が突然落ち着き、周囲は異常に静かになった。環境によって作り出された雰囲気が私たちをいったんその場面から引き離し、そして私たち自身を超えるものを引き出したのだ。」
― 晃晃

「ここは経験の限界を超えた場所。時間も、ハプニングも、美しさも醜さも、善悪も正誤もない。すべての本当の真実を超えた赤裸々な真実は、画期的かつ超越性が私たちにもたらした唯一の答えかもしれない。そして、拘束から解放された自由、つまりこれまでになかった自由は、ほとんど完全なる自由だ。(中略) 少なくとも、私たちは限りなく近づいていた。」
― 劉珂

-判型
200 × 200 mm
-頁数
132頁
-製本
ハードカバー
-発行年
2020
-エディション
1000
-言語
英語、日本語、中国語
-ISBN
978-4-905453-98-7

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