Photobook "Shinjuku Lost Child" (Zen Foto Gallery, 2016)
Photobook "Shinjuku Lost Child" (Zen Foto Gallery, 2016)

4月20日に毎日ホールにて関係者を招いて土門拳賞授賞式が行われ、Zen Foto Galleryオーナーのマーク・ピアソンからの祝辞が読み上げられました。

©Seung-Woo Yang
©Seung-Woo Yang

梁丞佑のことは、2009年、禪フォトギャラリーを開廊したばかりの頃から知っている。彼は私に、故郷の韓国に戻って撮った不良少年時代の仲間や古巣から、新宿・歌舞伎町まで、さまざまなテーマの作品を見せてくれた。彼の作品は、私たちが知ることを恐れている世界を見せてくれる。私たちは梁がその場に居ただけでなく、その瞬間に写真を撮ったことに感動するのだ。彼はまた、友達でホームレスのゴン太さんと後に彼の妻となる恋人の写真をとおして、より穏やかな側面をも見せてくれた。

私たちは光栄にも、梁の作品集を3冊出版させてもらった。『青春吉日』は、母国・韓国に戻って撮られたもので、多くが裏社会に入り込んだ旧友を写した作品だ。梁は、韓国から日本に移り住まなければ、ギャングの道から抜け出すことは出来なかっただろうと語った。彼はその道すがら既に親友のひとりを失い、存命の友人たちもまた不正行為や搾取、投獄、集団暴行や、もっと惨いことの影で生き延びている。彼の作品は、そんな、彼が置き去りにしてきた者たちへの思慕と同情を写し出している。

©Seung-Woo Yang
©Seung-Woo Yang

2011年には梁の二作目となる作品集で、友人のゴン太を撮った作品による『君はあっちがわ 僕はこっちがわII』を出版した。これは、問題のある家庭に育ち、通常の社会に馴染めないホームレスの男のポートレイトで、心の琴線に触れるような詩情とユーモアに溢れている。彼らはそのあり方こそ違えど、共にはみ出し者である。梁は異国に住み、新たな人生を築くために故郷と友人、自身のそれまでの生き方を置き去りにしてきた。しかしながら、今日の日本は画一化された形式社会で、型にはまらない者達を受け止めるような場所ではない。

©Seung-Woo Yang
©Seung-Woo Yang

昨年、3冊目の作品集『新宿迷子』出版のために、ふたたび梁と仕事をした。その作品集には、比較的近年に撮られた写真がおさめられている。新宿の路上でヤクザや放浪者、ホステスや、母が夜通し働く間、歌舞伎町の路上を彷徨く子どもたちと出くわしながら撮られた作品だ。
梁はどういうわけか、彼自身の人生を守るには、彼を若き下っ端ヤクザたらしめていた縁を断ち切るしかないと知っていたようだ。梁は、それでもなお、10代の頃に知った全身が奮い立つような感覚を忘れることができず、その興奮を再び味わうため、写真家として幾度も、歌舞伎町の路上に舞い戻った。

マーク・ピアソン




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