20世紀末の渋谷は、ギャル文化が花開いていた。渋谷センター街にたむろする若者達が生み出した個性的な流行とその文化。そしてSHIBUYA109(マルキュー)で店員達が提供する最先端のファッションに憧れた若者が、全国から渋谷に集まった。この写真集は、そんな1999年の渋谷を活写している。

 ギャルという言葉は、米語の「girl」の俗語の「gal」を由来とする外来語である。この言葉は当初、若くて活発な女性全般を表していたが、1990年代初頭、バブル景気時にボディコンシャス等を身に纏い派手にディスコで遊んでいた20歳前後のイケイケギャル、そして、彼女達の影響を受けた下の世代のコギャルと呼ばれる女子高校生が渋谷に登場したことにより、意味合いを変えていく。
 彼らのファッションは欧米人への憧れであるように見えるかもしれないが、実は身近なストリートで魅力的なファッションをしている者、109のカリスマ店員、雑誌のモデル、国内アーティストへの憧れが中心であった。無意識的にアメリカ西海岸的な文化を、日本の文化、社会的な文脈、身体的な特徴に合わせた形で、ローカライゼーションしていったものであったといえるだろう。(中略)

 この写真集は、まさに渋谷ギャル文化が花開いていた時代の若者の特徴的な姿を鮮やかに写し出している。私が知る限り、ガングロギャルの文化を捉えたこのような写真集はこれまで存在していない。文化資料という意味でも、本書は20世紀末の若者文化を記録した重要な一冊となるだろう。

― 荒井悠介、「世紀末渋谷のストリートとファッション」より抜粋

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