1968年は世界が揺れた年であった。べトナム戦争は長期化し、パリでは学生たちによるデモ、チェコは「プラハの春」を恐れた国々に制圧された。アメリカではキング牧師やロバート・ケネディが暗殺された。その一方では翌年、アポロが月に到着した。

そして1968年は私が写真を撮り始めた時でもあった。新宿の街をカメラを持ってほっつき歩き、人々を、気づいたものを趣くままに撮っていた。そんな日々が続いたある夜中、新宿周辺が群集で大混乱になっている流れに遭遇した。「国際反戦デー」のデモであった。いままでメディアの情報として知っていたベトナム戦争、群衆のひとりとしてリアリティになった。機動隊のサーチライトが揺れる群集の中ヘルメット群を照らし、そのシルエットが激しく揺れ、うごめく。日本のステュ–デントパワーが社会と対峙し巨大なうねりとなっている。

この前後、私ははじめて東大の本郷キャンパスに入った。山本義隆氏(当時東大全共闘代表)に出会ったことが、インスパィアーされ、東大闘争を撮る決定的なものになったのである。バリケード内は地方からの学生、一般の人々、高校生たちの自由に出入りできる解放空間でもあった。

47年近く経ったいま記憶がだんだん遠のいていくなか、唯一残されたフィルムによって、新たな記憶。奥深くあった全共闘のスピリットが引きだれてきました。

-渡辺眸

判型
257 x 178 mm
頁数
48頁、掲載作品38点
製本
ソフトカバー
発行年
2015
言語
日本語、英語
エディション
500

Artist Profile

渡辺眸

1968 年、東京総合写真専門学校卒業。卒業時の制作展で「香具師の世界」を発表し、その後も撮り続けて「アサヒグラフ」「写真映像」に作品が掲載される。同じ頃、新宿の街を撮る中で全共闘ムーヴメントに出合う。'72 年にアジア各国を旅しインド、ネパールを初めて訪ねた際、魂の原郷と感じてしばらく暮らす。帰国後「命あるもの」へのメッセージとしてスピリチュアル・ドキュメントを軸に撮っている。最新シリーズ[Loyus] は撮り続けて7 年目。写真集に『天竺』(野草社、1983-- 年)、『モヒタの夢の旅』(偕成社、1986 年)『猿年紀』(新潮社、1994 年)、『西方神話』(中央公論社、1997 年)『CD-ROM 西方神話』(デジタローグ、1998 年)、『ひらいて、Lotus』(出帆新社、2001 年)、『てつがくのさる』(出帆新社、2003 年)など。2007 年10-11 月に銀座・大阪のニコンサロンで写真展「全共闘の季節」を開催。2013 年5-7 月に東京都写真美術館にて「日本写真の1968」企画展に出展。

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