ひとと衣食住に割り込むことを拒否されて、それを取り囲むように叢がある。叢は、雪や雨や風や日の光に、その有様を変える。
 わらすこ(子供)たちは、山肌の斜面の雑木や叢でターザンごっこをやり。秋の名月(おめげっつぁん)には薄などを取りにいった。
 逆巻く毛っこ掻き分けて――蔦の覆った、その暗がりに心が落ち着いた。親に怒られたとき。挫折を味わったとき。アア、オイ(私)はひとりぼっちなんだと逃げた場所。恐ろしい場所。やがて叢の中の栗の香は大人になったことを知らせた。
 ひとと衣食住がそこにある前は、叢が在った。

― 橋本照嵩、あとがきより

Artist Profile

橋本照嵩

1939年、宮城県石巻市生まれ。1963年、日本大芸術学部写真学科卒。1974年、写真集『瞽女』出版(のら社)にて日本写真協会新人賞受賞。同年「15人の写真展」(東京国立近代美術館主催)へ「瞽女」を出品した。1979年から1981年にかけて韓国にて李朝民画を撮影し、講談社より「李朝の民画」上下二巻セットを刊行した。近年は2011年に被災した故郷の石巻へ定期的に帰郷し撮影するなど精力的に活動している。

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