1998年の夏、歌舞伎町でダンボールを敷いて夜を過ごしながら撮影を続けていた梁丞佑は、隣で寝ていたごん太という名のホームレスの友人ができた。ごん太の中で世界は二つに分かれていたーー帰る場所があるか、ないか。それだけで「あっちがわ」と「こっちがわ」。異なる側に立ちながらも、二人の間には静かな友情が芽生えた。梁はごん太の生き様をレンズに収め、その言葉と姿を作品として刻み続けることで、隔てられた二つの世界に橋を架けようとした。その想いのもとで、2006年に新風社より、そして2011年禅フォトギャラリーより「君はあっちがわ 僕はこっちがわ」シリーズ二冊として上梓した。
しかしこの20年以上にわたった友情は、ごん太の死によって、後悔という色を帯びることになった。絶版となっていた二冊の写真集に新たな作品を加え、一冊にまとめた「完結版」として、この度あらためて世に送り出す。写真というメディアの本質にある記録性は、写真家と被写体の間に交わされた感情をありのままに映し出し、時空を超えて息づき続ける。やがてそれは彷徨う二つの心を結びつけ、作品と向き合う者の胸にも、静かにその感情を呼び起こす。

「ごん太に『ありがとう』というといつも『こちらこそ』と言ってくれた。その関係に甘えたまま最後まで来た。私にできることといえば、できるだけ長く元気に人生を全うしながら、ごん太の文章と姿をたくさんの人に見てもらって、ごん太が喜んでくれるように頑張ることくらい。それで『彼の世』に行ってごん太に会った時、あの時会えなかった言い訳が少しは少なくなるんじゃないかなと勝手に思ったりもしている。
亡くなった後、顔が見たくても写真がなかった昔の友人がいたのだが、ごん太にはその心配だけはない。
写真家になってよかったと久しぶりに思った。」
― 梁丞佑(本書あとがき「ごん太が死んだ」より)

-判型
169 × 260 × 55 mm
-頁数
200頁、掲載作品129点
-製本
ソフトカバー
-発行年
2026
-言語
英語、日本語
-ISBN
978-4-910244-54-9

Artist Profile

梁丞佑

韓国出身。1996年に来日し、日本写真芸術専門学校と、東京工芸大学芸術学部写真学科を卒業。その後、同大学院芸術学研究科を修了し、日本を中心に活動する。2016年に禅フォトギャラリーより刊行した写真集『新宿迷子』にて、新宿・歌舞伎町の街を居場所とする人々をモノクロームスナップショットで記録し、土門拳賞を受賞。2017年には同じく禅フォトギャラリーより写真集『人』を刊行した。同年パリのinbetween galleryにて個展を開催するなど、近年は国際的にも活躍の場を広げている。その他の写真集に『君はあっちがわ 僕はこっちがわ』(2006年、新風舎)、『君はあっちがわ 僕はこっちがわ II』(2011年、禅フォトギャラリー)、『青春吉日』(2012年、禅フォトギャラリー)、『青春吉日』新装版 (2019年、禅フォトギャラリー)、『The Last Cabaret』(2020年、禅フォトギャラリー)、『ヤン太郎 バカ太郎』(2021年、禅フォトギャラリー)、『TEKIYA 的屋』(2022年、禅フォトギャラリー)、『荷物』(2023年、禅フォトギャラリー)、『辛朝鮮』(2024年、禅フォトギャラリー)などがある。

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