渡辺 眸 写真展「LOTUS」
禅フォトギャラリーは、4月26日から5月18日まで渡辺眸 写真展「LOTUS」を開催いたします。前回の「天竺—Colour—」(2022)に続き、禅フォトギャラリーでは4回目となる今回の渡辺眸の個展は、写真集『LOTUS』(野草社、4月8日刊)の出版を記念した展覧会となります。渡辺の代表作で5月12日まで埼玉県立近代美術館にて開催されている「アブソリュート・チェアーズ」展にも出品中の「東大全共闘」を記録した当時、学生運動が終焉を迎えた70年代初頭からアジアを旅した渡辺は、帰国後、彼の地における魂の原郷との出会いを象徴する蓮花のシリーズの撮影に長い年月をかけて取り組みました。今回はシリーズ集大成となる写真集から選りすぐりの作品を展示いたします。
いまは昔、インド、ブッダガヤ。
日中は50度にもなる、暑い季節、暑い場所ー
5月のある早朝、
寺院の境内にある蓮池にむかって坐っていた。
かすかに、ポッ、ポッと花弁がひらく音が聞こえる。
あたりにはやさしい香気もただよっている。
ほのかな香りにつつまれていると、
目の前の蓮の林が大きくゆれ、
細長いカヌーを漕ぎながら、村娘があらわれた。
献花のためなのだろうか、
蓮の合間を縫うように、まだつぼみの花を摘んでいく‥‥。
あれから年月を経て
宇佐神宮の「原始ハス」に出会ったとき、
水底に沈んでいた記憶があふれだし、はじまりの合図をきいたのです。
—渡辺眸