家族の写真について考えていると、カビだらけのフィルムのことを思い出した。長い間押入れに放置されてきた使い捨てカメラを取り出してみると、あまりにもカビがひどいので中身のフィルム だけプリント屋さんに出すことに。
全部で15本。えっちらおっちらカメラからフィルムを取り出していると、これは一体いつ頃のカメラで、どんな時の写真が写っているのかと想像した。そんな昔ではないかもしれないし、結構前かもしれない。このパトローネ1つ1つがタイムカプセルそのものみたいでちょっと興奮した。たくさんお金がかかるということで月に2本ずつお店に出すことになった。だいたい半年くらいかかる。まぁ焦るもんでもないかとまとめて現像したい気持ちを抑えながら、ふと家を強制退去させられた時のことを思い出した。小学三年生の頃に家を追い出され当時家族6人で車中生活をし、そのまま養護施設へ預けられた時期があったけど、今ここに昔からのアルバムがあるということは、あの時持ってきてたということか。強制退去の際に持ち出したものといえば、カセットコンロとランドセルと少しの服、それとアルバム。きけばオトンの指示らしい。そうかぁ。オトンはそういうオトンだったのか。
カビカメラが入ってるスーパーの袋に細長い紙切れが2枚入っていて、なんだこれはと見てみると16年前の2000年6月と7月分の給与明細だった。しかもその6月の月収は6万ちょっと……ん? おかしくない? 少なすぎ? とよくよく考えると、16年前の夏といえば養護施設から今の家に引き取られたばかりの、あの夏休みの頃か…と合点がいった。

— 作者テキストより

Artist Profile

山本雅紀

1989年、兵庫県生まれ。2012年、日本写真映像専門学校卒業。2015年、新宿・大阪ニコンサロンにて開催した個展「山本家」にてニコンサロンJuna21写真展年度賞「三木淳賞奨励賞」を受賞。また翌年の2016年には「I’m home」にてThe Editor’s Photo Award ZOOMS JAPAN 2016 エディター賞を受賞。同年禪フォトギャラリーにて開催したグループ展「Three and Eight」に参加し、蛇腹式ポスター『ハラワタ/ Guts』を刊行。2017年、禅フォトギャラリーより初写真集『我が家』を刊行し、パリのMind’s Eye - Adrian Bondy Galleryにて個展を開催。同じくパリのヨーロッパ写真美術館に作品が収蔵された。また、清里フォトアートミュージアム主催のヤング・ポートフォリオでは、2017年、2021年、2022年に入選し作品が収蔵されている。2022年にはイスラエル・ヘルツリーヤにあるテオ・アート・センターにて開催された日本とイスラエルの写真家15名によるグループ展「Inside Out」に出品するなど、国際的に活動している。

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