「山内道雄の写真が持つ粗びた粒子と強いコントラストでとらえられた顔貌のクローズ・アップは、ストリートを行き交いする人間のエネルギーや街の猥雑さが息苦しいほどに見る者に迫ってくる。そのまなざしは決して安定的なものではない。不用意に街角でぶつかってしまったような出会いの瞬間のエネルギーが、一枚の写真として凝固してしまっているようだ。どの写真にも、被写体との距離感を測ることのできない不思議な居心地の悪いまなざしが貫かれている。…

…いまから20年前の1995年から97年に撮影されたネガをもう一度見直し、新しく編集しなおされた「香港」は、山内の方法が作家本人とって有効であるだけでなく、現在の写真表現の問題としていまだ有効であることを物語ってやまない。それはジャズにおけるハード・バップやロックにおけるヘヴィ―・メタルがいまだに「現在」の表現として多くの人々にリアリティーをもって受け取られるように、1980年代に確立した写真表現の様式がいかに有効で、かつ可能性をもっているものであるかを、山内の写真は雄弁に物語っていよう。そして、その様式によってしかとらえられない「世界」が現実としてたしかにいまだ存在しているということを、雄弁に物語ってもいるのだ。」

― 金子隆一、「変わらなさの有効性」より抜粋

判型
246 x 326 x 27mm
頁数
198ページ、掲載作品103点
言語
和文、英語
製本
ハードカバー
発行年
2015
エディション
700(赤表紙:500/紺表紙:200)

Artist Profile

山内道雄

山内道雄は1950年愛知県生まれ。早稲田大学第二文学部(現、廃部)卒業。1980年、東京写真専門学校(現、東京ビジュアルアーツ)の夜間部に入学。1982年に同校を卒業、イメージショップCAMPに参加し、写真雑誌や自主ギャラリーを中心に写真の発表を精力的に行う。1992年以降、撮影範囲を東京だけではなく上海や香港、ダッカなど、アジアの主要都市へと広げ作品を制作。主な個展に「香港1995-1997」ZEN FOTO GALLERY(東京、2016年)、「東京2009.12.」サードディストリクトギャラリー(東京、2010年)、「CALCUTTA」コニカミノルタフォトプラザ(東京、2004年)、「TOKYO、東京」銀座ニコンサロン(東京、2002年)、「東京1983.2-1986.2」オリンパスギャラリー(東京、1986年)など。主な写真集に『基隆』(グラフィカ編集室刊、2010年)、『東京2005-2007』(蒼穹舎刊、2008年)、『街』(蒼穹舎刊、1992年)、『人へ』(Place M刊、1992年)など。主な受賞に第35回土門拳賞(「DHAKA 2」にて、2015年度)、第20回林忠彦賞(「基隆」にて、2011年)など。作品の主な収蔵先に東京都写真美術館(東京)、周南市美術博物館(山口)など。

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