禅フォトギャラリーは、8月9日(金)から31日(土)まで、山内道雄 写真展『LONDON』を開催いたします。禅フォトギャラリーでは2015年の「ダッカ」展と2016年の「香港1995-1997」以来となる本展覧会は、これまでアジアの多くの都市を撮影し作品を発表してきた山内道雄が、弊廊オーナー、マーク・ピアソンの「ロンドンの写真がないので撮ってみませんか」という提案により、昨年自身初となるヨーロッパでの撮影を敢行した作品を発表いたします。山内の目がとらえた生き生きとした現在のロンドンの街と光、そこに集う人々の姿を是非ご高覧ください。

赤信号なのに警官が平気で横断歩道を渡ってゆく。日本ではあってはならないことなので違和感を覚えたが、車が来ていないときに渡るのが一番安全だ、ということなのだろう。私も常々そう思っているので嬉しくなってしまった。盗難に遇ったときは慌てた。日本に帰りたくなった。3人組のニセ警官が麻薬の検査をすると言って私のバッグから現金の大半を手品師のごとく抜き盗ってしまった。頭脳的でさすがにシャーロック・ホームズを生んだ国だ。 ホームレスが意外に多かった。しかし、吸っているタバコや靴などは大ざっぱに言ってそれほど粗悪なものではない。貧しい国の死と隣り合わせのホームレスの人々とは歴然とした差がある。無料の食事配布車が毎日巡回していることからも、貧困の責任は個人はさることながら社会にもある、と考えているようだ。ロンドンは暮らしやすい街だ、と言われる一端が窺える。

キングス・クロス駅のすぐ近くに大英図書館がある。そこでウィンドラッシュ展が開催されていた。1948年からしばらく続いた移民の社会現象を当時のストリートフォトを主体に展示したもので大盛況であった。しかし、今のロンドンを将来、ストリートフォトでこのような形で振り返ることは果たして可能だろうか。路上でカメラマンをみかけることは滅多になかったし、こちらの撮影を拒む人が圧倒的に多かった。 ロンドンの写真がない——マークさんの言葉が改めて深く響いてくる。

——山内道雄

Artist Profile

山内道雄

山内道雄は1950年愛知県生まれ。早稲田大学第二文学部(現、廃部)卒業。1980年、東京写真専門学校(現、東京ビジュアルアーツ)の夜間部に入学。1982年に同校を卒業、イメージショップCAMPに参加し、写真雑誌や自主ギャラリーを中心に写真の発表を精力的に行う。1992年以降、撮影範囲を東京だけではなく上海や香港、ダッカなど、アジアの主要都市へと広げ作品を制作。主な個展に「香港1995-1997」ZEN FOTO GALLERY(東京、2016年)、「東京2009.12.」サードディストリクトギャラリー(東京、2010年)、「CALCUTTA」コニカミノルタフォトプラザ(東京、2004年)、「TOKYO、東京」銀座ニコンサロン(東京、2002年)、「東京1983.2-1986.2」オリンパスギャラリー(東京、1986年)など。主な写真集に『基隆』(グラフィカ編集室刊、2010年)、『東京2005-2007』(蒼穹舎刊、2008年)、『街』(蒼穹舎刊、1992年)、『人へ』(Place M刊、1992年)など。主な受賞に第35回土門拳賞(「DHAKA 2」にて、2015年度)、第20回林忠彦賞(「基隆」にて、2011年)など。作品の主な収蔵先に東京都写真美術館(東京)、周南市美術博物館(山口)など。

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