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禅フォトギャラリーは、10月25日(金)から11月30日(土)まで、殿村任香写真展「魂トリップ soul trip」を開催いたします。殿村の韓国人の祖父と日本人の祖母の愛を通して、人が愛し合うということをいま一度問う内容である本作は、本年のアルル国際写真展(7月1日ー9月29日)にて、アソシエイトプログラムとしてKyotographieとSigmaによるプロデュースとKeringによるサポートで開催された「TRANSCENDENCE」で初公開され、大きな注目を浴びました。この度の展覧会とT3 Photo Asia(10月19日ー21日)への出品が、この作品の日本での初披露となります。また、展覧会に合わせ写真集『魂トリップ soul trip』を禅フォトギャラリーより刊行いたします。ぜひご高覧ください。

導かれるように旅した”ソウル”への旅は、私の祖父と祖母の”魂”へと続く旅となりました

祖父と祖母の愛は国境を越えた愛でした
二人で敦賀の山を三つ越えてから死ぬまで愛に生きた二人でしたが、当時の情勢の中では
日本と韓国の国境の悲しみは深く、その悲しみは誰かの憎しみの声となって祖父母の愛の
中に轟き、その声は私の中にも暗く轟き続けていました

初めてソウルを旅したのは2012年
私は心臓を半分置いてきてしまったかのような、身が焦がれるような感覚になりました
ソウルに恋をしてしまったのです

その旅は、不思議な偶然に満ちていて、友人にも恵まれ、彼らの存在に私の悲しみは解か
れていき、暗く轟き敬遠していたはずの韓国の存在は美しく煌めいていきました

日本人だった祖母は約束した韓服の花嫁衣装を着て韓国人として死にました

愛は自由です
そして、自由は重いものです

祖母のその意志は人を愛するということの意味を教えてくれました

命は偶然ではなく必然であり、命の源は愛です
祖父母がただ愛し合っただけのように
ただ、愛そう

国境の悲しみも、憎しみの声も、ただ愛そう

ソウルへの恋は私の最も美しい記憶の一つとなり、祖父母の魂と共に私の命に宿っています

—殿村任香

Artist Profile

殿村任香

1979年生まれ。大阪ビジュアルアーツ放送・映画学科卒業後、2002年より写真を撮り始める。2008年、自身の家族の日常を赤裸々に撮った「母恋 ハハ・ラブ」を赤々舎より出版。鮮烈にデビューし、世間に重い衝撃を与えた。2013年には、新宿歌舞伎町でホステスとして夜の人々と生きながら撮った「ゼィコードゥミーユカリ」をZen Foto Galleryより出版し発表した。近年の著作に「orange elephant」(2015年、Zen Foto Gallery)、「cheki」(2018年、Morel Books)、「焦がれ死に die of love」(2018年、Zen Foto Gallery)、「SHINING WOMAN #cancerbeauty」(2020年、Zen Foto Gallery)、「母恋 ハハ・ラブ」新装版 (2021年、Zen Foto Gallery)、「Toxic」(2022年、Zen Foto Gallery)、「ゼィコードゥミーユカリ」新装版(2023年、Zen Foto Gallery)がある。

また、国内のみならず海外での活躍も目覚ましく、2016年には香港のBlindspot Galleryにて開催された「Shikijo: Eroticism in Japanese Photography」展、2018年5月にはロンドンのDaiwa Foundation Japan House Galleryにて開催されたグループ展などに参加し、2019年には、がんと闘い向き合う女性のポートレートプロジェクト「SHINING WOMAN PROJECT」を立ち上げた。2022年、パリのヨーロッパ写真美術館のグループ展「Love Songs」に出品した「母恋 ハハ・ラブ」が同館のコレクションとして収蔵された。また、同年のKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭において開催された10人の女性写真家によるプログラム「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」や2024年のアルル国際写真祭アソシエイトプログラムにおいて開催された「TRANSCENDENCE」にも作品を出品している。