竹谷出 写真展「よみびとしらず」
禅フォトギャラリーは2026年6月26日(金)から2026年8月8日(土)まで、写真家・竹谷出個展「よみびとしらず」を開催いたします。作家にとって禅フォトギャラリーで初の個展となる本展では、長年手がけた日本ではあまり知られていない古典印画法・カーボンプリントの作品から、選りすぐりの作品20点を展示いたします。匿名の風景とそこに堆積した時間そのものを、物質として定着させようとする試みである本シリーズは、禅フォトギャラリーにて初公開いたします。
今回展示するカーボンプリントは、顔料の色を選択でき、ネガの階調を忠実に再現し、高い耐久性を誇る技法です。竹谷は色味と質感の異なる五種類の顔料を用いております。プリントに記された「SG」は墨汁「玄宗」、「SK」は墨汁「呉竹」、「CB」はカーボンブラック(煤)、「SB」は「Speedball India ink」、「BC」は「Black Cat India ink」を示しています。一枚一枚の作品は独自の表情を持ち、技法そのものが生み出す凹凸と素材感をじかに味わうことができます。作品を並べて眺める時、そこに像として目に映るものが、やがて点と線の連なりへと変わってゆくこともあります。全ては、ひとつのカタチへと還ってゆきます。
「よみびとしらずとは、和歌や俳句などで作者が不明、あるいは匿名であることを指す言葉です。都市や自然の表面には、数えきれないほどの匿名的な痕跡が刻まれています。それらは、人の手によるものと風化、意図と偶然が折り重なりながら生まれ、いつしか“誰のものでもない”存在へと変わっていきます。そのように“なるようになったかたち”に惹かれてきました。
本展では、時間や風雨によって変質した人工物や自然の造形を撮影し、カーボンプリントという古典印画法で作品化しました。顔料を用いるこの方法は、像を焼き付けるというより、そこに堆積した時間そのものを物質として定着させる行為のように感じています。」―竹谷 出