PARIS IRIDESCENT(玉虫色のパリ)は、Tokyo Rumandoの近年の映像作品やライブ・パフォーマンスを全く異なるフォーマットと素材で紹介するシリーズの第一弾である。このパリ編ではTokyo Rumandoが10年以上前に写真・映像クリエイターの大島利浩と始めたプロジェクト「The Story of S」を構成する作品のうち、「Paris Peep Hole」、「Narrating LIPS」、「Disco Red Dress」を中心に紹介している。すべての映像と画像はこのエディションのために再構成され、再編集されている。「光線の具合や角度によって虹色のように見える」IRIDESCENT(玉虫色)の意味通り、写真集も照明で反射した身体が虹色のように様々な色に変化していく構成となっている。

― 出版社説明文より

Paris Iridescent の制作にあたり、「The Story of S」(Since 2015-)と言う映像作品の中からパリ編として幾つかの作品を数年間熟成させ再構築し、新たに切り出しました。この本は第一弾として発刊され、その後第二弾、第三弾と続きます。映像作品「The Story of S」は、かれこれ10年以上前から大島氏と共に始めたプロジェクトです。私は主にパフォーマンスとコンセプトを作る役割がありました。「S」とは何かを探ると言う私自身の記憶から派生する動機的テーマがあり、それを新しい視点、様々な映像技法やパフォーマンスなどで試す場所であり、自由度の高い制作を積み重ねて繋げていく一つのメディア空間としています。

映像をご覧になった方はご存知かもしれませんが、映像は私がハイヒールを履いて歩き続ける脚の部分だけがクローズアップで写されている所から始まっています。
私にとって、この歩き続けているパフォーマンスが非常に重要です。常に前進している事を意味する。
そして前進の道中で作品と言う停留所をいくつも作り私の道が少しずつ完成していきます。

第一弾(パリ編)ではパリでライブパフォーマンスを行った際の映像を主に使用しています。観客が小さな覗き穴を覗き、私のパフォーマンスを見ると言うものでした。

覗き穴を覗く彼らの欲望という名の視線と「S」との関係性を色鮮やかに表しています。

― TOKYO RUMANDO

 

TOKYO RUMANDOさんと共同で映像プロジェクトを始めて10年あまり。

東日本震災後の混乱もあり、あえて具体的に方向性を決めずにその都度お互いの浮かんできたインスピレーションに導かれながら出来る事をやっていこう、というだけの縛りで互いのモチベーションを維持して来ました。

始めた当初、漠然と取り決めていたのは、このプロジェクト自体を[終着点]Destinationとせずに点と点を繋ぐ[通過点]passing pointにしていくという事。ひとつの扉を開いて次の扉を開くまでの行脚を記録する事自体が何らかのアートになるのではないかというイメージでした。

この10年で互いが個々に取組んでいる作品のフェーズも変化していき2020年ドイツのFolkwang美術館や2021年Zen Foto Galleryでの映像展示に結実してひとつの折り返し点を迎えたかたちに至ります。

今回Zen Foto Galleryからアンソロジー的に3部作の写真集という印刷メディアで出版される事は映像表現メディアだけを念頭に置いていた私にとっては想定外の出来事であり、とても嬉しいサプライズとなりました。

共同のプロジェクトが本という実体として世界に生み落とされる事は、液体のように絶えず流れ、一定のかたちをとどめない映像という虚像に携わって来た自分にとっては創造のエッセンスが結晶として現出するような興奮さえ覚えます。

しかし...これもおそらくこのプロジェクトのひとつの[通過点]...次の扉を開くまでの行脚なのかもしれません。

― 2024年8月 大島利浩

 

Tokyo Rumando 「The Story of S 」上映履歴

  • 2021 Zen Foto Gallery (Tokyo)
  • 2020 Folkwang Museum (Germany)
  • 2019 Unseen Amsterdam IBASHO booth (Amsterdam)
  • 2018 Daiwa foundation Japan house Gallery (London)
  • 2017 Unseen Amsterdam living room talk show (Amsterdam)
  • 2016 Vacant (Tokyo)
  • 2016 Taka Ishii Gallery Paris (Paris)
-判型
200 × 200 mm
-頁数
120頁
-製本
ハードカバー
-発行年
2024
-言語
英語
-エディション
500
-ISBN
978-4-910244-35-8

Artist Profile

Tokyo Rumando

1980年、東京生まれ。2005年より独学で写真を撮り始め、自身のポートレートを主に撮影している。「Orphée」が2016年にロンドンのテート・モダンにて開催されたグループ展「Performing for the Camera」に出品され、近年もドイツのフォルクヴァンク美術館での個展「The Story of S」(2020年)や、イギリスのアシュモレアン美術館でのグループ展「Tokyo: Art & Photography」展(2021年)に参加するなど海外でも精力的に活動している。その他の主な個展に「Hotel Life」(2012年、Place M)、「REST 3000~ STAY 5000~」(2012年、禅フォトギャラリー)、「Orphée」(2014年、Tokyo Light Room/Place M/禅フォトギャラリー)、「I’m only happy when I’m naked」(2016年、Taka Ishii Gallery Photography Paris/2018年、IBASHO Gallery) 、「S」(2018年、禅フォトギャラリー)、映像作品展「S TRIP」(2021年、禅フォトギャラリー)などがある。また、禅フォトギャラリーより写真集『REST 3000~ STAY 5000~』(2012年)、『Orphée』(2014年)、『selfpolaroids』(2017年)、『S』(2018年)を出版している。