夏の砂浜の中でも特異な環境で知られるとある海岸にて撮られた写真群です。さながら写真家としての夏の浜辺での撮影現場の有り様を見る様な、スナップ写真のだいご味を味あわせてくれる作品です。
彼の写真を撮る事に対する執着心、そしてそこから生まれる写真の断片の集積は単なる質の高いスナップ写真、階調性の高いプリント作品集という枠を超え、写真が社会的な意味や心理学的側面を持ち始めるという証明にもなっています。日常の中の非日常、人が社会の中で被る顔から離れ自由をまん喫する姿を楽しめるだけでなく、ある特定の環境、刺激の中での人間の心理、行動がすっかり変わる姿、その特異性を明快に映し出している興味深い作品として見ることもできます。観賞者が写真を読み取りたい欲望をそそられる作品となっています。被写体像、夏の浜辺で写真採取を重ねる頼もしい写真家像、そしてこの二者の現場での“その時”の関係を楽しめる作品となっています。海外での活躍が期待される写真家です。

— 布施直樹(写真家)

Artist Profile