『TOKYO CIRCULATION』など、都市のスナップショットで知られる有元伸也の長らく絶版となっていたファーストフォトブック『西藏より肖像』(1999年・ビジュアルアーツ刊)を再編、未発表作を追加収録した新装版。当時まだ20代だった有元が、中国・インド・ネパールの国境を越えて拡がるチベット文化圏を駆け巡り、そこで出会った人々と寝食を共にしながら長期にわたって撮影した瑞々しいモノクロームのイメージが収録されている。

 「写真学校を卒業して間もない二十歳の頃、半年間のインド滞在中に撮影したフィルム全てを盗難されるという悲運に見舞われた。その後、次なるテーマを模索すべく新たな旅を開始した僕は、偶然立ち寄ったネパールのカトマンズで或るチベット人の家族と出会う。巡礼者である彼らと食住を共にするようになってから、彼らの故郷であるチベットをこの目で見たいと思い始めた。しかしその矢先、かねてからの不摂生が祟り肝炎を発症して入院、そしてその検査中に心臓の不調も発覚して急遽帰国の途を余儀なくされる。  帰国してからというものは、日雇いの肉体労働で旅の資金を蓄え、チベット関連の書籍を読み漁り、チベット語を勉強して次の旅に備える日々が続いた。そうして一年後、思い焦がれたチベットの地を初めて旅した時の感動は今も忘れることがない。様々な偶然や不幸な出来事が重なってチベットに辿り着いたのだが、もしかすると、それらの出来事はチベットに出会うべくしてあったのかもしれないと思えた。  いちど空っぽになった容器を満たすかのように僕はチベットにのめり込み、気がつけば二十代の人生の大半はチベットと共にあった。」
― 有元伸也

判型
290 × 220 mm
頁数
176頁、掲載作品117点
製本
ハードカバー
発行年
2019
言語
英語、日本語
エディション
1000

Artist Profile

有元伸也

1971年大阪府生まれ。1994年ビジュアルアーツ専門学校大阪卒業。1998年「西藏より肖像」にて第35回太陽賞を受賞し、翌年ビジュアルアーツより同名写真集を刊行した。2008年にTOTEM POLE PHOTO GALLERYを設立。2016年に『TOKYO CIRCULATION』を禅フォトギャラリーより刊行し、第26回林忠彦賞と2017年日本写真協会作家賞を受賞した。2019年には絶版となっていた『西藏より肖像』の新装版である『TIBET』を禅フォトギャラリーより刊行。その他の主な著作に『Tokyo Debugger』(2020年、禅フォトギャラリー)、『Tokyo Strut』(2022年、禅フォトギャラリー)、『ariphoto selection』No.1~10 (TOTEM POLE PHOTO GALLERY)がある。2017年にはパリのLe Plac'Art Photoで個展を開催、また2019年にはドイツのMuseum Bautzenでの3人展「Am Rand der Gesellschaft. Barlach – Springer – Arimoto」 に参加するなど国際的にも活躍している。

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