淵上裕太 写真展「上野公園」
禅フォトギャラリーは、12月1日(金)から23日(土)まで、淵上裕太 写真展「上野公園」を開催いたします。東京都写真美術館にて来年1月21日まで開催中の「見るまえに跳べ 日本の新進作家 Vol.20」展に最新のカラーシリーズ「上野公園」を出品中の淵上裕太は、昨年塩竈フォトフェスティバル写真賞にて同作品が大賞を受賞し、本年10月に同フェスティバルより写真集『上野公園』が刊行されるなど、近年めざましい活躍を遂げています。禅フォトギャラリーで初となる今回の淵上の個展では、淵上が上京してから数年間の間に撮影した初期のモノクロ作品を展示いたします。また会期中の12月2日(土)には写真家のジョン・サイパルを招き、淵上とともに二人が魅了されてやまない上野公園をメインテーマにクロストークを行います。是非ご高覧ください。
「上野に初めて訪れたのは2015年の夏だったと思います。東京に上京して間もない頃、気になる場所を訪れて、隅から隅まで歩き、人に声をかけてポートレート写真を撮影していました。その時は、人以外にシャッターを押すことがなかったので、撮影する場所はどこでも良いと考えていました。その頃、東京という場所で自分の撮りたい対象が多くいる場所を見つけるのが難しかったように思います。
上野駅を降りて、初めて感じたのは「しょんべんくさい」という印象で、生きている匂いがしました。これは私が東京で初めて感じたものでした。駅前には数人のホームレスが寝転がっていました。私はいつものように隅々まで1日歩き、夕日が落ちてきた頃に偶然上野公園の不忍池を見つけました。その光景には圧倒され、枯れた茶色に染まる池は死を感じさせました。それ以降、上野公園は私の東京で一番好きな場所となり、撮影する場所になりました。
展示させていただく作品は、2015年から2019年まで上野公園を歩き、モノクロフィルムで撮影した写真です。
モノクロ写真は私にとって一番好きなもので、色がないことで長時間見ていられ、写真に静けさや哀愁が漂います。私の写真が人間が何者であるかや生きる意味などを伝えることは難しいですが、人々がこの場所で美しく生きているという事実を記録し続けたいと思っています。人間は非常に醜く、同時に美しい存在です。さまざまな人がいて、強く強く生きています。それだけで非常に美しく、私の心を引き寄せ離しません。
同時開催の「見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol.20」東京都写真美術館【2023.10.27(金)—2024.1.21(日)】に出展されているのは、2020年から2023年に撮影されたカラー写真です。私にとって、2つの会場で一つの展示作品としてのイメージがあります。ぜひ、両方合わせてご覧いただけると幸いです。」
-2023年11月 淵上裕太