有元伸也は、初期の頃から一貫して人間とその暮らしの環境に関心を向け、写真を撮り続けてきた。街を彷徨しながら写真を撮り続けるうちに、絶えず変遷する都市のなかにプリミティブな生命の営みを探るようになり、2006年より日本一の乗降者数を誇るターミナル駅であり、都庁を核に副都心として機能する新宿に着目し、その日常を撮るようになった。『Tokyo Strut』は、有元が巨大な生態系としての都市に生きる人々の肖像を写し取った『Tokyo Circulation』以降の最新作をまとめた写真集。

「僕は写真を撮っている。「写真家」とか「アーティスト」とか名乗ってみれば聞こえは良いが、正直それで食えてるわけでもなく、偏屈な性格から世渡りを上手くできない現状もある。幼少の頃から人と同じことができない自分を欠陥人間だと思っていたし、そう思わざるを得ない世間の風潮を過敏に感じていた。協調性や空気を読むことが尊ばれる世の中に於いてはどうにも生きにくい性格だ。……それでも自分を信じて堂々と生きたい欲求があり、それを見事に体現しているような人たちに出会うと心の底から嬉しくなり、リスペクトとシンパシーを持って撮影する。厳格なテーマなんかもないので、ほとんどのカットにおいて、絞りとシャッタースピードは固定。フォーカス位置も目測、ノーファインダーでシャッターを押している。現像した写真を見ると、当然ながら構図は不安定、ピントも曖昧で人物の顔が途切れているカットなんかも多々ある。たとえそれが失敗だとしても気にしない。「ハッピーでラッキー」という単純明快な言葉を唱えながらズンズン進む。そうすることで過去の呪縛から開放され、より自分らしく振る舞うことが出来るようにと。」
― 有元伸也

-判型
200 × 200 mm
-頁数
168頁、掲載作品: 149点
-製本
ハードカバー
-発行年
2022
-言語
英語、日本語
-ISBN
978-4-910244-16-7

Artist Profile

有元伸也

1971年大阪府生まれ。1994年ビジュアルアーツ専門学校大阪卒業。1998年「西藏より肖像」にて第35回太陽賞を受賞し、翌年ビジュアルアーツより同名写真集を刊行した。2008年にTOTEM POLE PHOTO GALLERYを設立。2016年に『TOKYO CIRCULATION』を禅フォトギャラリーより刊行し、第26回林忠彦賞と2017年日本写真協会作家賞を受賞した。2019年には絶版となっていた『西藏より肖像』の新装版である『TIBET』を禅フォトギャラリーより刊行。その他の主な著作に『Tokyo Debugger』(2020年、禅フォトギャラリー)、『Tokyo Strut』(2022年、禅フォトギャラリー)、『ariphoto selection』No.1~10 (TOTEM POLE PHOTO GALLERY)がある。2017年にはパリのLe Plac'Art Photoで個展を開催、また2019年にはドイツのMuseum Bautzenでの3人展「Am Rand der Gesellschaft. Barlach – Springer – Arimoto」 に参加するなど国際的にも活躍している。

Gallery Exhibitions