夜でなく日の光で見た方が、逆によく「orange elephant」の世界に入ってゆけるように思うのです。
説明がないだけに、そして何が写っているかが、おぼろげなだけにかえって、詩情がひろがってゆきます。
わたしがちゃんと受けとめられたかどうかわかりませんが、ページをめくりながら長い叙情詩を味わっているようでした。
ある意味、非常に極端な写真ですが、すべての写真の中に殿村さんの息をつめた呼吸を感じました。

─ 神蔵美子

 

『母恋 ハハ・ラブ』(赤々舎刊 2008)、『ゼィコードゥミーユカリ』(zen foto gallery刊 2013)以来、 3冊目となる写真集。


今作「orange elephant」は、殿村の真骨頂であり、彼女の写真でしか見あたらない生理的な生色に溢れています。

流動する光の痕跡は瞬き、美しさを乞う。色は夜を越え、交じわる事により、朝の存在を彷彿とさせる。 あえて省かれた写真の"間"に彼女の切実な願いと希望を見る。

不確かな

夜の始まり

夜の終わり

死を待つオレンジ

真実は
肉片

写真は300年先で待っている

─ 殿村任香

殿村は、蝶が孵化した瞬間の濡れた羽である。 私達は、薄まって行く元来の写真の世界を、彼女の中に強く生きている事を確信することでしょう。 彼女の美しき光をどうぞご覧下さい。

― 出版社説明文より

Artist Profile

殿村任香

1979年生まれ。大阪ビジュアルアーツ放送・映画学科卒業後、2002年より写真を撮り始める。2008年、自身の家族の日常を赤裸々に撮った「母恋 ハハ・ラブ」を赤々舎より出版。鮮烈にデビューし、世間に重い衝撃を与えた。2013年には、新宿歌舞伎町でホステスとして夜の人々と生きながら撮った「ゼィコードゥミーユカリ」をZen Foto Galleryより出版し発表した。近年の著作に「orange elephant」(2015年、Zen Foto Gallery)、「cheki」(2018年、Morel Books)、「焦がれ死に die of love」(2018年、Zen Foto Gallery)、「SHINING WOMAN #cancerbeauty」(2020年、Zen Foto Gallery)、「母恋 ハハ・ラブ」新装版 (2021年、Zen Foto Gallery)、「Toxic」(2022年、Zen Foto Gallery)がある。また、国内のみならず海外での活躍も目覚ましく、2016年には香港のBlindspot Galleryにて開催された「Shikijo: eroticism in Japanese photography」展、2018年5月にはロンドンのDaiwa Foundation Japan House Galleryにて開催されたグループ展などに参加。2022年、パリのヨーロッパ写真美術館のグループ展「Love Songs」に出品した「母恋 ハハ・ラブ」が同館のコレクションとして収蔵された。また、同年のKYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭において開催された10人の女性写真家によるプログラム「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」にも作品を出品している。

Gallery Exhibitions