陳偉江「油麻地」
我是一個廢物
俺はろくでなし
香港のような街は他にない。香港を陳偉江のように撮る人はいない。陳偉江のような写真家もいない。 陳偉江は1976年香港生まれ。父は新聞社のカメラマンとして、母はマカオのカジノで働いていた。1988年、彼は香港の新法書院に入学するも、わずか一年でドロップアウトした。それから長い間、彼はレストランやオフィスのボーイなど職を転々とする。10代の頃から何とはなしに写真を撮り始め、完全な独学と独立独歩の精神で写真にのめり込んでいった。彼は常にモノクロフィルムで写真を撮る。
5年ほど前から、陳は全ての時間を写真に集中するために仕事を辞めた。自らのプリントとハンドメイドの写真集の販売が彼の主な収入源である。険しく細く、かつ宿命づけられた写真家としての道に彼は決して揺らがなかった。これまでに『灣仔(2011)』,『啊~ (2011)』,『婷婷 (2012)』,『日常的愛 (2013)』,『係香港 (2014)』,『金鐘 (2015)』,『警像(2015)』など15冊以上の写真集を自費出版している。禪フォトギャラリーも今回の展示に合わせて彼の新しい写真集『油麻地』を出版した。
彼は一見奇妙な風貌をしているが、実際は静かで謙虚な性格である。なによりこと写真に関しては誰よりも自信を持っている。
写真に関して言えば、俺は自分をどうしようもない"ろくでなし"に分類するだろう。正直に言うと、写真がなくても俺は死にはしない、いつだって俺は写真がなくても生きていける。実際シャッターを押すことは些細なことだ。俺は写真を撮る。だけどそれは俺がしたいようにすれば良いってことじゃない。俺の写真の中の景色はすでに存在していた。他の誰かが写真を撮っても構わなかったわけだし。いずれにせよその景色は変わらない。俺はただ偶然撮っているだけ。俺がすごいだって?いや、それは大したことじゃない。
ー陳偉江 2013年9月
油麻地は香港の典型的な地域であり、露天商人や外国人、地元住民など老若男女が集まるローカルな場所である。通りには露天市場、食堂があり、裏通りでは違法なギャンブルが横行し、売春婦がうろついている。香港は150年以上にわたって様々な文化や人が混ざり合い成り立ってきた国際的な都市である。自由奔放な都市だが、近年は政治経済の変化による捻れによって街は無情にも変容してきている。陳は日々直感的に歩き回る。街路、路地、そしてビルディングを。彼はすべてを直視し、何かを写す。