1974年花蓮へ向かう電車の中で、旅行中の人々が暖かな太陽の下で静かに眠ったり、過去に思いふけったり、何かを 待っているのを見た。見慣れた光景でありながら、どこか遠々しくも感じる。ある男が弁当を自分の体にくくりつけ て、つまようじを口にくわえながら線路の真ん中を歩いて行った...

ー張照堂《On the Road 1974-2003.Film》

張照堂(Chang Chao-Tang)は台湾を代表する最も重要な写真家である。1960年代、台湾の保守的な社会環境の下で、当時学生だった張氏は、現代文学と超現実主義絵画に着想を得た滑稽かつ荒涼とした悲劇的な写真を発表した。”ピンボケ”、”顔に白粉”、”首のないフィギュア”、”身体の揺さぶり”といった自 身の心の内にある苦しみや抑圧感を吐き出した写真は、従来のサロン写真とは異なる独自のスタイルによって、写真界 と台湾社会に衝撃を与えた。以来張氏は国内での写真展だけでなくアメリカ、アジア各国など国際的な活躍をしてい る。2013年には台北市立美術館(Taipei Fine Art Museum)で大規模な初の回顧展が開催された。

この度禪フォトギャラリーでは、1962年から1985年までの写真を中心に紹介する。彼の写真美学を築き上げた初期作品から、「社会の記憶」と「心象風景」を題材とした1970年代以降の作品、そして映像作品、写真集も展示する。写真、動画、書籍といった異なる視覚メディアの展示によって彼の創作的軌跡をより立体的に構成する試みである。

また展示期間中の4月5日(土曜日、午後3時半~5時)には写真評論家の飯沢耕太郎氏を招き、張照堂と対談を開催する 予定(要予約・ 参加費500円・ドリンク付き)。