この度、Zen Foto Galleryでは10月31日[土]~11月21日[土]まで薄井一議写真展「Showa92」を開催致します。本作は、2011年に発表された「Showa88/昭和88年」の続編にあたります。また、同名写真集をZen Foto Galleryより刊行いたします。

東京オリンピックを目前にし、街はいたるところで浄化作戦が進められている。
この事が良いとか悪いとか言うことではない。
ただ白か黒か、正義か悪かでは決められない、グレーな文化、矛盾の文化もいよいよ無くなろうとしている現実がある。
崇高さといかがわしさが共存し、恐怖と滑稽が交錯し、生と死の匂いがする。
その表裏一体は、本来あるべき人間らしさのように感じてならない。
日本という国が完成してゆき、共存の隙を許さず、世の中に逃げ場込む場所(アジール)が希薄になった今、
それらの物を僕なりの方法論でしっかり記録して行きたい。

ー薄井一議

*アジール “侵すことの出来ない聖域”もしくは“逃げ込めば法律の力が及ばない保護区域”の事をいう。

作者にとっての“昭和”とは、けっしてノスタルジーではなくスーパーフラット化される現代社会と真逆にある、生き抜く力強さの象徴であると語っています。この作品群におさめられているのは、津軽の人形婚、日本最後の見世物小屋、元任侠の三線弾き、秘宝館、闘犬などの光景が次々に登場します。これらの現代日本からアウトサイドの位置に置かれている文化、そこにに漂う崇高さといかがわしさ、恐怖と滑稽、生と死、相反するイメージが写真というメディアを使い、現実と夢の間をぬって白昼夢のように写し出されています。

Artist Profile

薄井一議

1975年東京生まれ。1998年東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京工芸大学在学中に写真家・細江英公のもとで写真の基礎を学び、初期シリーズ「マカロニキリシタン」などには細江作品の影響が見られる。主な個展に「マカロニキリシタン」(1996年コニカミノルタプラザ)、「Showa88/昭和88年」(2011年禅フォトギャラリー、2013年写大ギャラリー)、「Showa92」(2015年禅フォトギャラリー)、「Showa88-95」(2018年KKAG)、「Showa96」(2019年禅フォトギャラリー)がある。1997年にサンマリノインターナショナルフォトミーティング、2003年に東京都写真美術館で開催された「20代写真家の挑戦 IN&OUT」展、2016年にgalleri BALDER(オスロ)で開催された「A Vision of Japan」展、2022年にTEO Center for Culture, Art and Content(ヘルツリーヤ)で開催された「Inside Out: Through Japanese and Israeli Lenses」展、2024年にSchaefer International Gallery, Maui Arts & Cultural Center(ハワイ)にて開催された「FOCUS」展など、国内外のグループ展にも積極的に参加している。主な出版物に『マカロニキリシタン』(2006年美術出版社)、『Showa88/昭和88年』(2011年禅フォトギャラリー)、『Showa92』(2015年禅フォトギャラリー)、『Showa96』(2019年禅フォトギャラリー)、などがある。また2015年には映画「ダライ・ラマ14世」を企画・撮影した。清里フォトミュージアム (山梨)、東京工芸大学(東京)、株式会社アマナ(東京)に作品が収蔵されている。

Publications & Prints