禅フォトギャラリーは、10月25日(金)から12月21日(土)まで、クー・ボンチャン『長い午後に 無数の僕を追い求めて』写真集刊行記念展を開催いたします。この写真集は国際的に活躍する韓国人写真家であるクー・ボンチャンが1985年から1990年にかけて、激動する時代の波にもまれる韓国をモノクロームのフィルムで写し取った作品をまとめたもので、撮影から約30年後の今回ようやく1冊の本となりました。長期にわたるドイツへの留学から帰国したクーが目の当たりにしたのは、1988年のソウルオリンピックに向けて大きな変革の局面を迎えた韓国社会でした。混沌の中で日々変化していく故郷に馴染み難さを感じつつも、ソウルの街を彷徨し部外者の視線で切り取った作品には当時のクーの心境が刻み込まれています。展覧会ではこの中から選りすぐりの作品を25点展示いたしますので、写真集と合わせて是非ご高覧ください。

10月25日16時半からは半世紀以上に渡って韓国を撮影している日本を代表する報道写真家の桑原史成氏をゲストに迎え、作品の背景となっている当時の韓国の社会状況とクーの心境についてお話しします。こちらも是非ご参加ください。[予約不要・入場無料]

1985年
6年間に亘る海外留学を終えて帰国すると
ソウルはすっかり様変わりしていた
際限なく溢れる車と人間の洪水、騒音
網膜に現れては消えるイメージの渦
建築ラッシュ、愛国心、虚飾そして虚栄
夜明けから最後のネオンが消えるまで
この都市は大海の波面のように絶えず喘ぎ続けていた

見知らぬ都市で僕は
未知の何かを追い求めて
ひとり、彷徨っていた

ー具本昌

Artist Profile

具本昌(クー・ボンチャン)

1953年韓国ソウル生まれ。1975年、ソウルの延世大学経営学部経営学科卒業。1979年から1985年までドイツに留学、ハンブルク美術大学で写真デザインを専攻し、博士号を取得した。2000年イー・ミョンドン写真賞受賞(韓国)。

カメラ・オブスキュラ(パリ)、国際画廊(ソウル)、何必館 京都現代美術館、フィラデルフィア美術館などで30回を超える個展を開催。2015年に森美術館にて開催された「シンプルなかたち」展にも出展。ボストン美術館、サンフランシスコ近代美術館、ヒューストン美術館、ギメ東洋美術館、大英博物館、何必館 京都現代美術館、国立現代美術館(韓国)、サムスン美術館リウム、その他各国の美術館や個人コレクションに作品が収蔵されている。また、2010年より現在に至るまで慶一大学校にて写真を教えている。

現在、ソウル写真美術館にて大規模な個展を2020年1月11日まで開催中。

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