山崎弘義・竹田武史・甲斐啓二郎 写真展 「地とひと Vol.II」
禅フォトギャラリーは2025年5月9日(金)から6月21日(土)まで、山崎弘義・竹田武史・甲斐啓二郎 写真展「地とひと Vol.II」を開催いたします。この展覧会は、2021年に禅フォトギャラリーで開催した、人々を引きつけ、また人々に大きな影響をもたらし続ける磁場のような強い力を持つ場所と人との関係性にスポットを当てたグループ展「地とひと」の第2弾として、また、3人それぞれの新刊写真集の刊行を記念し開催いたします。5月10日(土)には作家3人によるトークイベントとオープニングレセプションを行いますので、是非ご参加ください。
山崎弘義『Around Lake Town』
埼玉県出身の山崎弘義は、越谷市でレイクタウン事業が始まる前の1997年から現在にいたるまで継続的に越谷レイクタウンを撮影し続けています。レイクタウンの由来となった大相模調整池とイオンモールを中心に築かれ、2008年のまちびらきから今年17年をむかえるニュータウンの変遷を写真家の視点からまとめた作品としてこの度「Around Lake Town」を発表いたします。
イオンレイクタウンという巨大ショッピングモールは消費意欲を過剰に刺激してくれる。そこには週末になると大挙して遠方からもお客さんがやってくる。埼玉県内で一番観光客が多いのは越谷市だと言われる。それはいうまでもなくこのモールが引き寄せたものに他ならない。しかしイオンは便利だけど何か物足りなさを感じる。ではなぜレイクタウンを撮るのか。それはレイクタウンが持続可能なのかという問いがあるからだ。一度更地にリセットされたレイクタウンはもうすぐまちびらき20年を迎える。その後の20年後にはどのような風景が広がっているのだろうか。
ー山崎弘義
竹田武史『京都パノラマ百景』
京都市出身で東京をベースに活動する竹田武史は、日本人の精神文化のルーツを求めて中国やインドなどの歴史ある場所を旅し、そこに住まう人々を撮影し続けてきました。一方で、都としての長い歴史を誇る故郷の街・京都をどのように撮影するか、長年あたため続けてきた本プロジェクトをコロナ禍に出会った旧ソビエト製のパノラマカメラにひらめきを得て、モノクロームのパノラマ風景100点としてまとめました。本展覧会では、100点の中から厳選したオリジナルプリントを展示いたします。
今から500年前、嵯峨野にあった遍照寺というお寺の庭で、剣聖・塚原卜伝は、「映るとも月も思わず 映すとも水も思わぬ 広沢の池」という歌を詠んだという。「月は(水に)映ろうとも思っていないで、ただ映っている。水も(月を)映そうとは思わないで、ただ映している。」戦国の世を生きた剣聖は、生死を分かつ真剣の立ち合いを、互いを意識せずに融け合う月と水の姿に表したのだ。では、この歌が示す自他の境界を越えて生命を内から把握しようとするものの見方を、「写真」の作法として捉えることはできないだろうか。ヨーロッパで生まれたPhotographの語源はPhoto=光、graph=描くである。ところが、Photograph=「光画」は日本へ渡来すると「写真」と訳された。おそらく、当時の日本人の感性には「光画」よりも「写真」の方がしっくりくる何かがあったのだろう。世界とは何か、写真とは何か…内なる魂の声は私をふるさとへ誘い、日本的な、延いては東洋的な感性の、さらなる源泉へと導いてくれたような気がしている。
ー竹田武史
甲斐啓二郎『一条の鉄』
甲斐啓二郎は、スポーツという近代的概念が生まれる以前の世界各地で伝統的に行われている格闘的な祭事を、その只中に身を投じながら撮影し、人間の「生」についての本質的な問いに対して写真で肉薄する作品を発表している写真家です。今回は、1200年の歴史があると言われている愛知県西尾市の鳥羽神明社で行われる「鳥羽の火祭り」を、2018年から2023年の間に撮影した最新作となる「一条の鉄」を発表いたします。また、本作は4月12日から5月11日まで京都で開催されるKyotographie京都国際写真祭のメインプログラム、甲斐啓二郎「骨の髄」展(くろちく万蔵ビル)でも展示されます。
年をとることも、苔むすこともない火は、常に古く新しく不変だ。1200年もの間、同じ火が一年に一度現れ、この町を照らし暴れていく。先人から受け継いだ古いのぼり旗の衣装で身を包み、1200年前と同じ火を浴びながら、彼らは無意識にも過去と接続する。ここには見えない時間が混沌と連なり、本質的な人間の生きることへの渇望、どう生き、どう生きてきたかの人間の歴史と、どう生きていくかの人間の未来が渦巻いている。
ー甲斐啓二郎