禅フォトギャラリーは、5月11日(金)から6月16日(土)まで、西村多美子写真展「旅人(Ryojin)」を開催いたします。禅フォトギャラリーで4度目の個展となる本展では、同名の新刊写真集に収録される作品群より、1979年に制作したヴィンテージのゼラチン・シルバー・プリント約15点を展示いたします。

「旅人」は1968年から1980年頃に撮影した1500枚ほどのプリントからセレクトしたものである。自分自身が生きてきた時間と空間が靄のように浮上してくるような思いがする。

歩きながら、電車の中で、バスや船で、いつもカメラを持ちスナップしてきた。数十年経っても変わらないスタンスである。

撮影して、暗室でフィルムをリールに巻き、深バットでカタカタと現像する。ベタ焼きを作り、セレクトしてプリントする。これも数十年変わらない。現像液の中でじわっと像が現れ黒が締まってくる。撮影した対象物が暗室作業でどのように現れてくるのか、その時間と工程が好きなのだ。

フィルムが手に入る限り、写真はフィルムで撮りたいと思っている。

ー西村多美子

展覧会に併せ、写真集『旅人』を刊行いたします。未発表の作品を含め、68年から80年頃に撮影されたプリントからセレクトした60点のモノクローム作品で構成されています。こちらもお手にとってご高覧頂けましたら幸いです。

Artist Profile

西村多美子

1948年東京生まれ、1969年東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)卒業。在学中に唐十郎率いるアングラ劇団「状況劇場」の舞台に通い、麿赤児や四谷シモンなどを撮影し、復帰前の沖縄へ初めての一人旅へ出る。卒業後、森山大道、多木浩二、中平卓馬というプロヴォーク運動で大きな影響力を持った3人と出会い、1970年まで暗室で彼らの制作を手伝う。1973年にそれまで北海道、東北、北陸、関東、関西、中国地方を旅して撮影したものをファースト写真集「しきしま」(東京写真専門学校出版局)として刊行する。

バイトや雑誌の仕事で旅費を貯め、1970年から80年代にかけて日本各地を旅し、また娘を連れて東京なども歩いて撮影している。1990年代以降は近代化画一化された日本を飛び出して、ヨーロッパ、南米、東南アジアなど海外を撮影した。

西村は写真を撮り始めた68年頃から現在に至るまで、半世紀を超える作家活動歴の間、一貫してフィルムで撮影し、自ら暗室でプリントを制作するという姿勢を変えていない。西村の写真は、詩的でスピリチュアル、そして深く個人的なものである。西村は自身のキャリアを振り返り、「旅の連続」と表現し、遊牧民のような人生観で写真を撮り続けてきた。旅が秘めているものを明らかにする彼女の写真は、旅先で出会う人生の多様な肖像である。

主な出版物に『しきしま』(東京写真専門学校出版局、1973)、『熱い風』(蒼穹舎、2005)、『実存1968-69状況劇場』(グラフィカ編集室、2011)、『憧景』(グラフィカ編集室、2012)、『しきしま 復刻新装版』(禅フォトギャラリー、2014)『猫が・・・』(禅フォトギャラリー、2015)、『舞人木花咲耶姫 — 子連れ旅日記』(禅フォトギャラリー、2016)、『旅人』(禅フォトギャラリー、2018)、『旅記』(禅フォトギャラリー、2019)、『続 (My Journey II. 1968-1989)』(禅フォトギャラリー、2020)等。香港M+美術館に作品が収蔵されている。

Publications & Prints

新刊

旅記

西村多美子