禅フォトギャラリーは、11月27日から12月26日まで中藤毅彦写真展「香港2019」を開催いたします。2018年に開催した個展「White Noise」に続き、中藤の個展は禅フォトギャラリーでは今回で4回目となります。民主化運動のデモの波が激化した昨年、大館當代美術館でのグループ展へ参加するために数度にわたり香港を訪れた際にモノクロで撮影した、デモとその裏で営まれる人々の日常風景の作品約30点を展示いたします。

ちょうどこの時期、民主化運動のデモの嵐はピークに達しており、必然的に自由を叫ぶ大群衆の行進や若者達と警察の激しい闘いの壮絶な光景を目撃する事になった。
12月に開催された老若男女数十万人によるデモ行進では、見た事もない数の人間が巨大なうねりとなって大河の様に流れていた。
日の暮れた後も、途切れる事のない人々がかかげるスマホライトの無数の光は、生涯忘れられないであろう胸を打つ光景だった。
勇武派と呼ばれる過激な若者達の抗議活動の現場では、筆舌に尽くし難い激しいエネルギーと暴力が渦巻いていた。
若いデモ参加者が大勢の機動隊に袋だたきにされ拘束される姿には大きなショックを受けた。
僕自身も催涙ガスにむせび、機動隊にサーチライトを直射され、身体的な消耗と恐怖すら覚えながらの撮影となった。
強大な武力を持つ権力によるなりふり構わぬ暴力は、同じ時代の現実の出来事とはにわかに信じられなかった…。

-中藤毅彦

Artist Profile

中藤毅彦

1970年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退、東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。モノクロームの都市スナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内の他、近年は東欧、ロシア、キューバなど世界各地を取材。自身の作家活動とともに、四谷三丁目にてギャラリーニエプスを運営。2013年に「HOKKAIDO: Sakuan, Matapaan」にて第29回東川賞特別作家賞、2015年に「Street Rambler」にて第24回林忠彦賞を受賞した。主な出版物に『Enter the mirror』(1997年、モール刊)、『Winterlicht』(2001年、ワイズ出版刊)、『Night Crawler』(2011年、禅フォトギャラリー刊)、『HOKKAIDO: Sakuan, Matapaan』(2013年、禅フォトギャラリー刊)、『White Noise』(2018年、禅フォトギャラリー刊)などがある。

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